「ポップスって、なぜ売れる?」6.当世音楽事情
50年以上前にレコード1枚3、4000円ってさ、
びっくりせえへん?
だっていまでもCD買うとしたって、あんなのそれこそ安い輸入盤だったら
1800円、1500円、セールで買うたら900円とかあるやん。
昔そんなに高かったんですよ。レコードって。
だからあの当時って、なんぼでしょう?
パンひとつ50円くらいでしたから、、、いや、50円もせえへんかったかも。
安いパンは30円とかやったから、いまだったらなんと!
パン100個買えんねん! あんぱんとか。
いまなんてさ、あんぱん、いくらぐらいですか? 120円くらい?
そんなもん?
だったら換算したら1万何千円やんか。
いまCD1枚、1万何千円やったらぜったい売れへんやん。
でも昔はそういうすごい高いレコードが当たり前みたいに売ってて、
それが売れてた時代です。
そうするとレコード会社、ビル建てます。
ビル建てれるくらいお金持ちなんです。
そしたら、お金持ちの音楽業界の人たちは、1人のスターを作るのに
何億も突っ込んでくれます。ほんとに。
ね、もうみんな言うてました。
うちってわたしが音声の専門の医者なんで、それこそほんとに有名な
歌手いっぱい来てくれます。
特に昔の人たちが来てくださるんですけど、そいう方々はほんとにいい
時代を生きてこられた方々だけど、でも出始めの頃はほんとにペーペー、
お給料なんかほとんどなかったって言ってました。
だって一応プロダクションにいればご飯は食べさせてもらえるから、
じゃ衣装代、それからお歌の先生にかかるレッスン代、それぜーんぶ
会社がだしてくれるわけです。
だからそれを会社が払うてってんだから、おまえらそんな偉そうなこと
言うなって、そんな給料なんか全然もらえへんくらいの、そんな感じです。
だけれど、ほんとに会社のあるチームが一丸となって1人のスターを、
歌姫をプリンスを作るためにバアーってお金かけてくれるわけ。
そしたらほんとにいい音楽ってのが育ってたんですよ。
ところがいまは残念なことに、いろんな会社がボーカルスクールとか
作ってますけど、まずきっちりした歌を教えようなんてところは
ほっとんどありません! これは、ほんとに、残念なことに。
じゃあ、何をさせているのかといったら、ハイ、ヘイ、ホイ! じゃ
ないけどさ、ちょっと振りをつけてカッコよく踊れて、なんかこうニコッと
お客さんの前でスマイルを見せる、そういうことのほうが先にいくわけです。
で、それで100人だして1人売れたらOK、残りの99人はバイバイ!
です。
で、その1人が、ちょっとなんかして文句言ったら、ハイ、じゃこれも
バイバイ! です。
もう次から次へです。
でもそれやってるからこそファンはなかなかひとつのユニットとか、
ひとつのグループ、1人の芸能人、歌手、スターについてきてくれない
から、ま、ほんとに際限がありません。
でも昔はそうやってほんとに(レコードに)曲が10曲入ってたらさ、
まあ1人の作曲がその10曲ぜんぶ担当してたら、10曲分の印税が
入ってきてたんですよ。
でもいまってさ、1曲ずつの配信でしょ。
もう曲細切れで売ってますやん。
あのー、いまでもわたしなんか古いタイプの人間やから、好きな曲だったら
CDで買っちゃうんですけど、CD1枚買うといま十何曲入ってたりします。
その十何曲分の印税がそのグループの人たち、もしくはたった1人かも
しれへんけど払われてるのやろうけど、いま1曲ずつの配信やから
ほんとにヒットソングやったらそこにガーっとお金集まるけど、
お金集まらへんかったらそんな曲すぐ消えていくもん。
なら、(いまの)音楽業界、全然お金ない。
だったらこの音楽業界、全然お金ない人たちはわざわざ1人の人育てて
レコードなんか作ってられへん。
じゃ、その子が、いっしょうけんめい歌うたってほんとはいい喉作って
やってかなあかんねんけど、何回かコンサート出て、ちょっと声アウトに
なったら、かまへん!いうてすぐ口パクでもってきます。
だって、ヘイ、ハイ、ホイ!っとカッコよく振り付けて踊れる子の方が
大切なんよ。見た目のほうが。
歌はなんぼでも作れるから。音は。
録音で使えるから。
・・・というようなかたちで、いまは音楽業界全体がそうなってるから、
そうするとおもろくなくなるわけですよ。
で、そうするとやっぱりCDが売れなくなる。
ま、ただ、そんななかでも、ホイホイハイ!でもなんでもいいんですけれ
ども、一応見せてくれる、楽しませてくれるユニット、そういうところに
お客は集まります。
そうするとなかなか1人の歌手なんて育てへんです。
Eガールズ、三代目、AKBシリーズ? だーっといっぱいいますよね。
もう、なんやかんやと。
1人のすごく才能のある、ほんとの意味でのスター、
という意味では、いまはスターの作れないスターの時代ですね。
で、そんななかでもう音楽業界がガタガタになってるんで、いい商品も出
されへんから、けっきょく本当の意味で音楽勉強したいって人も減ってしまう。
それを楽しめる人もいなきゃ、楽しませてくれる人もいない、
そんな時代です。
さあ、音楽を目指す若いみなさんはどこに行くかということです。
いっしょけんめいいっしょけんめい、ほんとにいい音楽作って、ゆずとか
コブクロとか、まあ若手言うても彼らもそこそこの歳になってきたかも
しれへんけれども、ああいうふうないい音楽をとにかく出そうと思って
がんばってやっていくのか、それともほんとにジャニーズ系とか、AKB系
の振りを上手にしてお客さんを大勢で楽しませる方向にいってヒュッと
消えていくのか。
どっちでいくかなんです。
とにかくいまはほんとに音楽業界、芸能界にとって大変な時代だと思います。
でもそんななかで、いま話したことが法則としてあるかぎりは、これ知っと
いていただいたら、「あ、じゃ僕はほんとに音楽大好きだから、息の長い
歌手になりたいなって言ったら、やっぱり基本としてジャズでもクラシック
でもなんでもいいです。そういうところからちゃんと習って、で、それを
自分のポップとしてオリジナルを書く。これオリジナル出さへんとお金に
ならないのよね。もうカバーだけやってたんじゃなっかなか大変です。
それにすぐ飽きられるし。
だって若い人、後から後から上手な人でてくるもん。
だからもうやるんやったらきっちり本格的にオリジナルです。
で、そうじゃなかったら若いうちだけ「チース!」って軽めにやって、
うまく当たったらそこで小金稼いで次のジャンルに行くか、それとも
その小金元に別の飲食やるかとかね。ま、パターンですけどね。
・・・そんな感じが、いまのポップミュージックワールドって感じなんですね。
だから、なんだか夢があるのかないのかわからないですけれども、でも
逆に言いますと、これだけ大変なところです。いまの音楽業界ね。
で、これで食ってくのはとても大変です。
であるからこそ本気の本気で音楽をやると、、、いまそういう人たちが
すごく少ないので、かならず将来有望になれる(かもしれない)
夢のあるフィールドかもしれません。
まあ、そんな具合にね、音楽や言葉というのはすごーくおもしろいものが
いっぱいあります。
ほんとに人間が犬や猫とちがうのは、やっぱり言葉が使える、歌が歌える
っていうようなことで、ほかの動物とは一線を画すわけなんですけれども、
でも実はそういう歌が、何故わたしたちの生活にこれだけ入り込んできてる
かっていうなかにも、やっぱり政治や経済やいろんな人の思惑ってのがある
わけなんですけれども、でもそうであったとしても最後の最後は、やっぱり
とてもピュアなところではすばらしい芸術だ、ということを忘れないで
みなさん、楽しんでいただけたらなと思います。