「フェルマータをどう活かす?!」2.フレーズの最後を伸ばすと何が起きるか?
で、いまなんの話してるのかというと、リズムはすごいよって言ってるんだ
けれども、ただ、ここで、1、2、3、4、5、6、7、8って行進する、、
動くっていう意味で言うとわたしはいま行進するような感じでやってますから、
マーチで考えましょう。
タンタラランタラランランラン、、、みたいなね。
ずーっと流れます。
途中で駆けだしたりしませんからね。
ずーっと同じスピードで最初から最後まで行進ってのは続きますから、これは
延々と続きます。
ところが急に終息したり、急に速くなったりしたら、何が起きたんだろう?
ってことになりますね?
びっくりします。
後ろの人ついて行かれへんようになって途中でダンゴになったりします。
いったいこれは何が起きたのか?
一般的にもし音楽の世界で、リズムがガラッと変わる言うことがあるとすると
ですね、それは実は『シーンが変わる』いうことなんです。
いままで第一幕、何々があった、さあ次は第二幕というのがあった、で、その
次が、、、ときたときにですね、何かが、情景が変わるわけです。
いまここでロミオロミオって言ってジュリエットといちゃついてたと、、、
そうしたときにパンってこんどお父様が急に出てきて、、、みたいな。
そんな風に変わるときはリズムは変わっても平気です。ミュージカルとか、
オペラなんかでも。
だけれども、おんなじシーンが続く限りにおいては、ふつうはあんまり急に
リズムが変わっちゃうとみんなびっくりしちゃうんです。
え? 何が起きたのって。
だからそういう風にびっくりさせずに、いい音を続かせるということはですね、
何がいいのか? ってこと。それを今日はしっかり話ししよう、っていうこと
なんです。
今日のお話には『赤とんぼ』が非常にいいので『赤とんぼ』なんかとか童謡を
ちょっと歌いますけど、
ゆうやーけ こやけーの 赤とんぼ
おわれーてみたのーはー いつのーひーか
どう?
ああ、よくない、って言ってくれはってうれしい。
どんなふうによくない?
あっけない! って感じですよね。
でも、そういう歌い方もあるにはあるわけやんか。
なんかこう、お芝居の中で、ぽつぽつっと歌って寂しさを表現する、とか。
哀しさを表現する、とか。
なんかほんとにあっけない。
ぽそん! みたいな。
そういうのを表現するにはありなわけじゃないですか。
とか、逆にいうと、
ずいずいずっころばし、ごまみそずい! 茶壷に追われてどっぴんしゃん!
抜けたぁーら、どんどこしょ。
パツンパツンと終わるでしょ?
これもほんとに瞬間ひょいひょいってあれも実は場面が変わってるんですね。
あの童謡ってのは。
それを表現するためにこんなんやってます。
逆に、ずいずいずっころばしごまみぞず~~~い~~~ 茶壷に追われて
どっぴんしゃ~~~ん
とかやったらしつこうて聞いてられへんと思いません?
嫌になりますよね?
だからその手の童謡がこんなになっちゃうと変なわけです。
で、じゃあ、
ゆうやーけこやけーの赤とんぼーーーー おわれーてみたのーはあー
いつのーーひいーかあーーー
これ別にフェルマータもリタルダンドも何もしてまっせん。
これたぶん原曲、というか、もともとこんな曲調なんですね。
でも、おわれてみたのはいつの日か、ときたときに、うしろにひょーんと
伸びると、聞いててどんなふうに思いますか?
心地いいとか、聞きやすい、とか、情景が浮かぶ、というような、、、
おお! なるほど。
ぼそん! といくより、長くやったほうが情景が浮かぶ。
なんかうれしいこというてくれはるな、今日の人は・・・・・・
●情景が浮かぶ
●心地よい
あなたはどんなふうに思う?
こういうふうに後ろが伸びてたら。
余韻が残る
余韻がね! うんうん!
で、わたしいまみなさんに説明するのに一生懸命で、あんまり余韻を残そう
とか、それから心地よくさせようとか、情景を浮かばせようとか、そんなこ
と思ってやってないんです。
ただほんとに、後ろを伸ばしただけです。
ただ伸ばしただけ。
では、まず伸ばすと、どういうことが起きるのか?
ちょっとここでみなさん、
何が起きてるのやろう? 何が起きたからこうなるのかっていうことを考え
といてほしいんです。
これ、答えは後で言います。
これを今日はみなさんと一緒に体験してほしいんですね。
えーと、ちょっと恥ずかしいなあって人もいるかもしれませんけれども、ぜひ
お手伝いしてほしいんです。
夕焼け小焼けの赤とんぼって知ってる?
ちょっと歌うて。
あんまり何も考えずにふつうに歌いはったらいいです。
ゆうやーけこやけーの 赤とんぼー
おわれてみたのはー いつのーひーかー
うん。ふつうに歌っていただいたね。
何か考えながらではなく、サクッと歌っていただきました。
えーと、どない?
ふつうに歌うていただいたんやけど、、、、
心地良いです。
そうねえ、曲もいいし、彼女も上手やからいうのもあんねんけども、
まあ、伸びたらそれなりにふんふんって思いますよね?
この曲ご存知ですよね?
ちょっと歌っていただけますか?
ゆうやーけこやけーの 赤とんぼー
おわれてみたのはー いつのーひーかー
ありがとうございます!
サクッとみなさん、歌っていただきました。
だけどやっぱり、ふつうに曲って伸ばすとなんとはなしにわたしたちは
感じるものがあります。
でね、この曲はほんとに日本人にとっては親しみ深い曲なんですけれども、
絶対フレーズの音はクレッシェンドにはならない、デクレッシェンドで音
を伸ばしながらだんだん小さくなってゆく、、、、
そこで音が小さくなって伸びてゆくと、何故か知らないけれど情景が浮か
んだり、心地よくなったり余韻が残るいうことが生理的に起きるんです。
生理的に。
どうしてかって言いますとね、まず、これいつもわたし言うんですけれども
音楽というのは、えー、ここでいま十何人かのみなさんと座ったり立ったり
してくださっているわけですけれども、この場所において誰かが音を奏でる、
カーっと寝てたり、下向いて一生懸命スマホでゲームしてるとか、そんなこ
となく、いまわたし、もしくは誰かの歌、誰かのお話に集中してくださって
ると、知らないあいだに「これ」を一緒に「体験」してる、身体で味わって
る、ってことが起きます。
『ミラーニューロン』って、そういう神経があるからなんですよ。
要するに、ひとつのことが起きたときに、誰かが一生懸命やってるのを見た
ときに、その人と同じような精神構造っていうか、心の動きが出てくるわけ。
だからよく歌手の人なんかが、声帯ポリープ作りました。
で、声帯ポリープ作って、喉切って、喉に傷ができるわけですから、喉に
傷ができたときには「音楽聴くな!」っていうんですね。特に自分の好きな
曲は。
どうしてか。
自分が歌ってない、喋ってない、だけれども音楽聴くだけで身体が反応しち
ゃう、喉も似たような動きをしてしまう。そしたら自分は歌ってないのに、
喉の傷がまたぶつかり合って、何もしゃべってないのに喉の傷がバンバン叩
かれる状態になってしまうから、できるだけ歌手の人の喉の手術をした後は
音楽はあまり聴かないでください、って言うんです。
そうしないと、もうすぐそういういつも音楽に親しんでいる人というのは、
何かあっても身体の筋肉がばーっと動いちゃうんです。
たとえばさ、夜ピアノ弾くでしょ。ときどき、夢で、、、、
絶対ピアニストなんて寝ながら指が動いてるんです。知らない間にピクピク。
筋電図ってのをとると寝てる間に夢でピアノ弾いてる人は、腕のあたりにピ
ピピピピッって電気が走ってるんねん。
だからほんとに生きものって、哺乳類であるていど知能があったりすると、
寝てる間に夢見てるときには、昼間身体を動かしてるのとまったく同じよう
に動いてるんですね。
それくらい敏感なものですから、もうこんなところで誰かがふつうに歌うた
おうものなら、おんなじように自分の身体も動いてしまうわけです。