「いい歌を歌う秘訣、教えます。」1.歌に必要なもの
パワーボイスセミナー 第76回
「いい歌を歌う秘訣、教えます。」
~ 歌詞から感じた直感を歌にするのって、意外と難しい… ~
恋心、親心、母心、真心・・・・・・
いろいろ心のつく言葉はありますが、それでは「歌心」ってなんでしょう?
歌には自然と歌い手の心が乗るものですが、前述の4つの心も意図的に気持ちを
こめたものではなさそうです。
つまり、音楽によって意図することなく自然に出てきた心のありよう、想い。
それが歌に上手に表現できて伝わったとき、人は心をつかまれ感動してしまう
のではないでしょうか。
では、意図せず歌に心を乗せる方法ってあるのでしょうか?
今回は歌詞から感じた『直感』を使って、この歌心を汲みあげるワークショップを
行います。
参加者のみなさんには好きな曲の歌詞カードを持ってお集まりいただきました。
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みなさん、どうもこんにちは!
松永です。
今日のお話は何かといいますと、「いい歌を歌う秘訣、教えます。」
というようなそういう大上段に振りかぶったエラそうなタイトルです(笑)
いい歌を歌う秘訣、いろいろあると思います。
ふだんでしたら、これからそれについていろんなことをお話しして、その中でも特に、
ということで進めていくんですけれども、実は今日はあまり時間がありません。
少しでもみなさんに感じていただけたらいいなあということで、
歌を聞いていただきます。
で、この歌、聞いたらたぶん、大体の方が「ああ、知ってる知ってる」って
いう歌だと思います。
その知ってる歌からみなさんが感じとったイメージというのを、単語でけっこ
うですから、2個ないし3個、思いつくまま書いていただいて、それをみんな
でまた検討していこう、今日はそこからはじめていこうと思います。
1曲め 美空ひばり 『川の流れのように』
はい、みなさん、この曲ご存知だと思います。
美空ひばりさんの『川の流れのように』ってやつですね。
彼女の晩年のヒットソングのひとつです。
ここに歌詞かーどがありますから、これをみなさんにお渡しします。
で、いまこの歌を聞いてどんなことを思い浮かべたかというのをそこに単語で
2つか3つ書いていただけますでしょうか。
・・・まずは順不同で読んでいきます。
昭和、川、暖かい、しあわせ、懐かしさ、明るさ、前向き、人生、郷愁
生きるということ、ふるさと、心のふるさと、
遥か上空から見下ろしてるような、迫力、やわらかさ、思い、道、
で、わたしは何を書いたかといいますと、やっぱり似たようなものなんです。
人生、喜び、経験。
だから、何とはなしに何かを経験してこられた方が、この自分の人生いろいろ
あったけれども、うれしかったな、たのしかったなと、でも辛いこと哀しいこと
もあったからよけいにその喜びもひとしおなのかな、というような。
そういうね、人生があって、ま、この人生、いろいろあったけどまだまだ続いて
いくわよ、と。これからもまだまだ生きるのよ、歌うのよ、というような、
そういう美空さんのグループの心持ちというか、夢や希望やいろんなものが見えて
くるような、そんな歌なんだと思いますけれども、わざわざそれをくどくどと
言わなくても、『知らず知らず歩いてきた』というのからはじまって、
『ああ、川の流れのように/ゆるやかに時代はいくつも過ぎて/ああ、川の流れのように
とめどなく空が黄昏に染まるだけ』と、
そういう歌詞の中でいろんなものが伝わってくると。
ここでですね、みなさんとともに今日はどんなことをやろうかっていうとですね、
まあほんとに歌を歌うとき、まずここでお話をしようと思うんですけど、小さな声
だとなかなか歌にならないんですね。
たとえばこれがいい曲だなあ、っていっても、小さな声でボソボソ歌ったんじゃ、
何歌ってるのかさっぱりわからないということになります。
じゃあ、デカイ声ならいいのか、といったら、デカすぎてうるさくてっていったら
それも話にならない。
まあ、バランスですね。
それでよく上手な歌を歌うため高い声をださなきゃっていうんで、高音を出したい、
出せるようになりたいっておっしゃる方もたくさんおいでなんですけども、じゃあ
この歌のキーはむちゃむちゃ高いのかといったらそんなに高くもない。
もちろん彼女は晩年、息がつづかなくなってきて声がぜんぶ出し切れなくってすごく
悲しい、残念な思いをして歌ってたっていうのをわたしは聞いたりしたこともあるん
ですけれども、でもほんとに、、、じゃあ、どうなんだろうって。
美空さんの少し最後のほうのいくつかのDVDとか拝見したりするですけれども、その
DVDの中で確かに彼女が悔しそうにして、ちょっとつらそうにして歌ってるところも
あるんですけど、音で聴くと、歌で聴くと、けっこうくるもんはくるんですね。
うまいな、いいな、素敵だなって。
だから、そういう風な素敵さっていうのは、高い声が出なくても伝わるのは伝わるん
ですね。
一般的に『音楽』っていうのは、まずメロディー。
メロディーをちゃんと歌うためにはピッチをとる、ってよく言いますけれど、じゃ
ドはド、レはレ、ミはミ、というふうに音をハズさずにきっちり歌う。
そして、リズム。
1,2,3,4,1,2,3,4、、、、、4分の4拍子ならこれをはずさないで
ちゃんとやる。
で、ハーモニー。
よくいわれます。
うしろの伴奏の人たちの音をよく聞いて、と。
なんでかというと、伴奏もタイミングをとったりリズムをとってやってるわけです
から、それにちゃんと一緒になって乗らないと、1人だけでわーっと歌ってると、
おんなじように譜面を見て歌ってるつもりでも、なんかギクシャクしたものが出て
くるんですね。
そのためにも、お歌というのは一緒に演じてる人の音を聴く。
大体こういうメロディー、リズム、ハーモニーの三要素をしっかり押さえたらいい
歌が歌える、というんですけれども、でもそれだけじゃない! ってのがあります。
メロディーがきっちりしてる、リズムがちゃんとしてる、ハーモニーもしっかりしてる。
ところが、それがちゃんとしてても、、、最近ですね、テレビでカラオケ歌合戦的な
ものがよくあるのをご存知でしょうか?
ちゃんとしたオリジナルの曲があって、その曲からどれだけピッチがズレないで、
少ししゃくりがあったりとか、なんかヴィブラートが利いたりとか、っていういろんな
効果音が入ってそこに加点が乗っかってきて、でそれでリズムもハーモニーもずらさずに
ちゃんと歌えてたら、ハイ、99点で優勝!! どーん!!!
みたいなのをやってます。
でも、そういうカラオケ大会なんかに出てこられた人の中には、ちょっと有名になって
自分のオリジナルも歌わせてもらって世の中に出てくるものの、結局ヒットソングが
続かずに消えていくって歌手も多いです。
なぜか?
いま言ったように、歌っていうのはメロディー、リズム、ハーモニーだけ抑えてても
だめだ! っていうことだとみなさんもよくご存じだろうと思います。
じゃあ、どういうことを抑えてったらいい歌になるのか?
この『いい歌の秘訣』っていうのをちょっと考えるために、
今日は最初に『川の流れのように』を聞いていただきました。
そうすると、この歌を聞くとですね、みなさんきっちりと人生とか、楽しさとか、
懐かしさとか、そういうような単語で返してくださいました。
ということは、この歌を歌ってると勝手にそういうものが滲み出てくるのか。
じゃあ、誰でもこの歌を歌えば勝手にそういうものが滲み出るでしょうか?
知らず/知らず/歩いてきた/ ってこんなふうに歌ってて、
わたしのいまのこんなぶっきらぼうな、木で鼻くくったような歌い方から、人生とか
懐かしさ、みんなに感じてもらえるでしょうか。
たぶん、感じでもらえません。
ということは逆に考えると、わたしは、みなさんは、何か曲を歌いたいとき、何かを
演りたいときに、じゃあ、どういうイメージをここに込めてったらいいのかな、という
のを、まず考えて見るってのはどうかな、っていうのが今日のその『秘訣』なんですね。