「感動を伝える歌い方」3.好きであることの素晴らしさ。まずは譜面を大切に。
メロディー、リズム、ハーモニー、これらがぴったり揃うととても持ちいい。そして、そこに1番最初に言った歌詞にあるドラマを自分が咀嚼して伝えよう、という気持ちがあればとっても素敵なわけですね。
これがもうとにかくベースです。
リズムとメロディーとハーモニーがきっちりしてる、歌詞があって、伝えるべきことがちゃんとわかってる。
そして自分がその世界が大好きだということ。
そもそも大好きじゃなかったら歌なんて歌ってられません。
まず、たとえば大好きというのがどれだけ大切か、簡単に説明してみると、ここに2つの円があります。
こっちのほうがより正円に近い、こっちは実は楕円です。
円を書いてくださいといわれて、きっちり書こうとする人と適当にパッと書く人がいますが、「円といったらこれでしょ。こっちは円じゃなくて楕円だよ」と、その差が違いがわかる、ということがないと好きにはなれません。
好きであることの素晴らしさとはどういうことかというと、違いがわかるってことです。
「日本と韓国? なんか似た国やな、でも違いがわからへん」
では、それはどっちでもいいってことで、どっちも好きにはならないってことです。たた適当に極東の、アジアの国、で一括りにして終わりです。
でもやっぱり日本と中国、中国と韓国、韓国と北朝鮮、それぞれの国に良さと悪さがある、それをきっちりわかったうえではじめて「○○の国が好き」といえる。
だから「好き」は才能です。
なぜか?
わかるから。
いいものと悪いものの差がわかるというのが、好き・嫌いということです。
それで、そういういろいろな「好き」っていうことがわかるようになってきたうえで、音楽をさあ伝えましょう、といったらはじめてそこに感動が伝えられる準備ができます。
この『Moon River』についてですけど、1,2,3,1,2,3でほんとに4分の3拍子で書いてありますけど、まず感動を伝えるために、っていうことでさっきリズムの話が出ましたけれど、譜面にはとうぜんリズムも載っています。
だからます歌を歌うときに、ぜったい譜面をっ大切にしてあげたい、ってことなんです。
スコア、譜面をまずは大切に。
このムーンリバーの1番最初、Moonって書いてあるとこね、ここたっぷり3拍あります。たっぷり3拍。
その次、riverのリーで1拍、バーで2拍あります。
これをさらっと「ムーンリバー、ワーイダーザン・アマイルー」とあんまりリズムを気にせずに歌ってしまうと、『ルバート』っていってリズムなしで歌う歌い方もあって、もう語りに近いです。
それはそれで味があるんですが、でもそれが語りなのか、それともほんとにリズムとって歌ってるのかどっちかわからない、というと、とってもややこしくなります。
(歌が)面白くなくなるし、伝わりにくくなります。
それを(譜面に従って)きちんとやりましょうということになったら、3泊だったらきっちり3拍とるんです。
たっぷりとって歌うと、そこの中でしっかりしたリズム、だけじゃなくて『ビート』ってのが出てきます。
ビートって、なあに?
ムーンリバーを歌ってみるとリズムは3拍の頭で強く鳴ってますよね?
でもその間に何もないわけじゃありません。
3拍の強く鳴っているところも、その間も、ひとつらなりの円でぐる~んと回ってるんですよね。
でないとつながらない。
でその、ぐる~んと回っている「ここ」と「ここ」と「ここ」と感じるときに「ここ」はたくさんかけて、「ここ」は短かったりしたら、リズムが崩れます。
しっかりどの瞬間も、どの空白も。大切にしてあげることではじめて4分の3拍子っていうとこにリズムが流れる、そこにムーンリバーっていう川の流れが出てくるんですよ。
ヘンリー・マンシーニさんがそこでこの川の流れを伝えようとしたわけですね。
そのためには一拍一拍をたっぷりとる。
作品、お話っていうものは、オリジナルを知っていればそこに多少アレンジや変更が加えられていてもなんだかわかりますが、オリジナルをまったく知らない人が極端に変えられてしまったものを聴いたらなんだかおかしなことになってしまう。
だからまずはオリジナル、スタンダードをきっちり伝える、ということですね。
・・・ということで、このムーンリバーだったらまずは四分の三拍子でやってみよう、ということです。