「わかりやすいセミナー、授業の発声法」2.ストーリーで刺激を与える

心は定まった、声も定まった、でもまだ何か足りないものがある。
つまり、心が定まっただけでは十分じゃないということなんですが、そのもう少し足りない部分というのは、何が足りないんでしょうか?

たとえば私の診察の場合で考えてみましょう。
いろいろわがままな主訴を訴えてやってくる患者さんに、まるで私が大阪商人のように揉み手しながら下手に出たりしたら、ぜんぜん信用されません。
やはり医者と患者という関係になりますと、医者があんまり下になると逆に患者さんは信用してくれなくなります。
やはり『先生』と名前の付く方は少し威厳を持ってきっちり喋らねばなりません。
でもそこで今日はどんな授業をするかセミナーをするか、ちゃんと心が定まってたら声も勝手に定まってくる。
それはたぶんもうわかっていただけると思います。

だけれど、その次、です。
もしまだ足りないものがあるとしたら、どうやってその足りないものを埋めたらいいのかという話です。
何が足りないのか?

いくら心が定まってても、いくら心が定まり声が定まってても、1から10まで情熱だけでどーーん!とやられたら、聴いてるほうはみんな疲れるんですよ。
たったの5分くらいだったら情熱でどーんといけるかもしれませんけど、でもまあ、5分だけのセミナーってあんまりないですよね?

お話というとのは、読んで字のごとく、ストーリーです。
ありとあらゆるものにはストーリーがあることで、みんな理解しやすくなるんです。

声と心が定まる、ということは聴衆が「安心できる」ということなんです。安心して、この人のいうことに耳を傾けてみようかという気になる。
『聴く耳を持つ』というやつですね。
ところが安心しすぎるとすぐに睡魔が襲ってきますね。
ですから話し手は聴衆を安心させたうえで聴衆の頭と心に適度な刺激を送りこまなきゃならないんです。
その『適度な刺激』というのが『ストーリー』です。
ストーリーには起承転結だの序破急(じょはきゅう)だの、漫才だったらボケ・ツッコミのかけあいだったりといろいろあるわけですけれどもではそういったストーリーをやるときにどんな発声法があるのか。
どういう声の使い方がいいのか、ということです。