ていねいに歌うってどういうこと? 5.100%の音楽じゃなくていい
レコーダーなどで自分の声を録音して聴いたとき、自分の声じゃないような違和感を感じるのは、自分は空気を伝わって耳に伝わる音のほかに、喉から頭の骨を伝って聞こえてくる振動、『骨導音』を聴いているからです。
ですから耳に何かの障害があって仲間と一緒に音楽をやろうというとき、かなりの集中力を持って相手の音を聴く、ほかの楽器の音を聴く、ということができないとハーモニーは作れない。バンド活動は難しくなります。
それでもどうしても音楽がやりたかったら先ほど話した補聴器を使う、という手もある。
そして、これは大切なことですが歌を歌ったり、音楽をやるのに、やたらと難しいことを考える必要はない。
まず精神論ではない。
お口をしっかり開ける、ちゃんと動かす、譜面に沿ってたっぷり歌う、歌に必要な基礎的なことをしっかりやると勝手に歌の枠はできる。
自分がそこに突っ込むものは少しでいい。
音楽は演奏する側と聞き手があって初めて成り立つ芸術です。
だから音楽は100%じゃなくていい。
少し隙間があるくらいでいい。
その隙間は聞き手が埋めてくれる。
人間の脳みそ、耳というのは、いま聞こえている音の中から自分の拾いたい音だけ拾って聞くという性質があります。
そこに足りないものがあれば勝手に補充して聴いてくれるんです。
ですから演奏者とリスナーがいて、そこで初めて音楽はパーフェクトになる。
演奏者の中でパーフェクトじゃなくてもいい、というのはそういうことです。
ただし、もちろんそのメインとなる音楽は大切です。
人は環境によって変わってしまう生きものなので、自分がほんとうに伝えたい音楽をやろうとするときは、音楽をつくるときに、どういう気持ちで、どういう環境でやるかを考えることはとても大切です。