「医学的腹式呼吸って、どんな呼吸?」2.ベル・カント唱法のポイント
美しい声で歌う、べル・カント唱法の1番のポイントは『喉を下げて歌う』ということです。
高い声を出すと喉は上がりやすくなります。
喉に手をあてて実際に「マーマーマー」と音階を発声してみましょう。
・・・どうでしたか?
音階が上下するのにつれて喉が上がって下がるのがわかったと思います。
何も意識しないで発声するとこのようになります。
でも付け根にいけばいくほど狭くなる首の構造からいって、喉がどんどん上に上がってしまうと、とうぜん高い声は出にくくなります。
そこで喉を下げたまま発声すると、喉が締まらず全然ラクに発声できます。
これは胸式、腹式、どちらでもできるのですが、いろいろな理由があって腹式呼吸でやるほうが便利なので、腹式呼吸でやりましょう、というお話をこれからします。
喉を下げる1番カンタンな方法はといったら、横隔膜を下げることです。
この横隔膜、膜とというと紙のように薄いものを想像してしまうかと思いますが、とんでもない、表現するならそれはこうもり傘のような形をした、ドーム型の、厚さにして5~6ミリはある筋肉の傘のようなものなんです。
この横隔膜の筋肉が上下に動いたり、とどまったりしてくれているせいで肺の動きを良くしてくれている、という機能があります。
ではその横隔膜は人間の身体のどのあたりですか、というと、肋骨のある脇腹の下にズーンと沿ってあるわけです。
それをどう動かすのかというと、昔から日本には『丹田』という言葉があって、この丹田にエネルギー、意識が集中した人のことを『胆が据わった人』などといったりしますが、ここがポイントなんです。
東洋医学では臍下丹田、へその下の丹田、といわれるところに意識を集中して、そこを外にどん!と出すようにします。
ここを出すと横隔膜が下に下がります。
「横隔膜を下げよう!」と頭で考えると難しいんですけど、丹田を外に出すだけで横隔膜が下がる。
横隔膜が下がるとどうなるかというと、肺がふくらみます。
ですから逆にいうとラジオ体操でやる深呼吸、あれは胸式呼吸なんですが、あんな風に肩を上げて両腕を開く動作をしなくても、丹田を前にぐっと出すだけで横隔膜が下がって勝手に肺がふくらむ、ということなんです。
肺の容積が広がるからたくさん声が出せるし、横隔膜が下がると肺が下がり、肺が下がると気支が下がって喉が下がるから、喉を下げたままで高い声が出しやすくなるわけです。
つまり、実はそれがベル・カント唱法のいちばん番基礎の、基本の、わかりやすい、やりやすい方法です。