「ボイスチェック&ソングチェック Part.7」1.Danny Boy
Dr.松永:
まずハミングをどうやったらきれいかということですけれども、いま「フーフーフー」とやってらしたけど、それもひとつのやり方かもしれないですけれども、ハミングする、っていうのは「フー」って音を
出さないんですよ。
ハミングっていうのは「ンー」と口を閉じて鼻から出すのがハミングなので、もしハミングでやるんだったらそうやってください。
でも非常にリズム感、ピッチ、いろんなものでしっかり歌おうとすると難しいもんですけど、けっこうちゃんと譜割もピッチもしっかりとってらっしゃったと思います。
だからけして、ああしなさい、こうしなさいとあんまりいうところはないんですけれど、ただ逆にいうと、ご自身がこの『ダニーボーイ』歌われて、どこが歌いにくいからこうしたい、とか、これがちょっとつらいからこうありたい、とか、こんな風にするにはどうしたらいいんだろうか、とか、そういうのってありますか?
Mさん:
高音になった瞬間に、もっと自然に出したいのに、どうしても息継ぎしないと息が足りなくなったり(これは練習不足のせいもあるかもしれませんけど)、とにかく私、高いキーが出にくいんですね。
Dr.松永:
えーとですね、いまMさん自身がおっしゃってくださったんでお話をしますけれども、まずタバコ!
タバコを吸うということはどういうことかというと、もうこれは早い話が『高音をあきらめる』ということです。
まずタバコを吸うと間違いなく声帯炎(声帯の炎症)が出てきます。
声帯というのは細い2つの粘膜のヒダなんですね。
2枚の紙で表現するとこんな感じ。
これがヒューッと寄ってきてペチャっと100%合わさると、声は出ないようになってしまいます。
そうなるといくら肺から空気が上がってきても声帯は揺れない。
声が出るにはほんの少しの隙間が必要です。
じゃないと空気が動きませんから。
ほんの少しの隙間があって、そこに空気が上がってきて2つの声帯がぶるぶる震えて声が出ます。
高い音を出そうと思ったら、紙に口を近づけて細かい周波数にしたら高い音が出せるし、ちょっと離してやると低い音になる。
これが高音と低温の物理的な秘密でもあるんですが、タバコを吸うとこの2枚の粘膜の声帯に濃縮されたタバコのニコチンタールがぶつかって、粘膜のヒダはあっという間に炎症を起こします。
1日のうちに途切れ途切れに4~5本なら、まぁなんとか毒性成分も代謝できるんですけれども、5本を超えちゃいますとだいたい声帯はぶくぶくっと腫れてきます。
腫れるとどうなるかというと、薄かった粘膜が分厚くなるわけですね。
音はすごく出にくくなるし、すごく力を入れないと動かなくなります。
タバコを吸い続ける=高音を諦める、ロングトーン、長い音をあきらめる、それがタバコを吸う人の宿命です。
だから歌手で、すごくいい歌手になりたいという人がタバコを吸うっていうのは、言語道断なんですね。
だからそういう意味で、残念ながらといっっちゃあなんなんですが、その高い音が出にくいというのも息が続かないのも、これしゃあないです!
ですからタバコをおやめになって、炎症を下げるお薬を飲んで、それでもうちょいがんばったら多少伸びてはきます。
だけどもただひとついえるのは、声をながーく伸ばしたほうがいいのかっていうと、テクニック的には長く伸ばすのは、やっぱり魂が乗っけられやすいんですね。
艶歌なんかでもそうでしょ?
声を伸ばす、音を伸ばす、、というのはそこに魂が乗っけやすいから伸ばしてるんです。