「大きな声で歌いたい」5.声を遠くに/ロングトーンの練習
そして最後は、遠くまで自分の声を届かせるための発声法です。
人間というのは特に何かをしなくても、自然と距離感をつかんで近くの人には近くの人に適した大きさの声で、また遠くの人にまで聞こえるように大きな声で歌おうと思ったら、それよりはるかに大きな声が出るものです。
つまり遠くに声を届かせようと思ったら自然と身体はそういう風に動いてくれるんです。
人間の身体って実に精密によくできているものです。
その距離に1番適した声が出せるようになってるんです。
ですから距離感を考えて声を出そうと思ったら変に考えこまずにただ物理的に「あそこにいるあの人に届くように」と思って、まるでボールを遠くに投げるような感じでやると、けっこう声は遠くまで届く、ということです。
いっぺん実際にやってみましょう。
どうでしたか?
これだけ大勢の人と一緒にやる、これが合唱の良さです。
1人でやってると声が出ないけど、みんなでやればこわくない。
大勢で一緒にやると声が響いて気持ちいいし、他人の声に引っぱってもらって自分の声も出る、自分の声で他人の声を押してあげることができる、それが合唱の良さなんです。
こういうのは全て実はイメージの世界で声が引っぱりだされるということです。
深呼吸の話。
みんなよくたくさん吸おうといいますが、でもたくさん吸おうと思ったら先にやらなきゃならないのは、たくさん吐くことです。
息を吐いて吐いて吐きまくるんです。
どうやって息を吐くのがいいかというと、一気にバスン!と吐くんじゃなくて、口から細い白い糸がスーッと出ているみたいなイメージで吐きつづけるんです。
スーーーーーーーー・・・・
これでたぶん1分くらいはやれると思うんですけど、ということは平気で1分は歌えるということなんですよ、ロングトーンが。
なんでできるかというと、これも実は意識なんです。
このように、スーーーーーとぜんぶ息を吐ききったら、こんどは吸うときに、ラッパ吹く人は口から吸ってもいいんですが歌を歌う人はスーッと鼻からしっかり吸いましょう。
で、そこでお腹を凹ませて胸をふくらませてしまうと胸式呼吸になってしまいます。
これも悪くはないですが、今日の腹式呼吸中心のお話からいったら腹式呼吸でやるのがいいので、まず肩をどん!と下げて、お腹をどんどん出しましょう。さっきもいいましたが武道をやるときのようにお腹をグッと力を入れて硬くするんじゃなくて、お腹をぐーんと自然に外に張っていきます。そうすると肺が自然と下に落ちていきます。肺は広がりやすくなります。
それでたっぷり息が入ってくるのと同時に横隔膜が下がる、気管が下がる、気管についている喉が下がる、喉が下がると、喉と口の距離が長くなって深い共鳴腔ができるから声がこんな風に響くようになります。
で、喉はすごくラクになります。
この感じで声を出すと喉がぎゅっと絞られないから喉が痛くなくて練習がすごく続けられます。
で、こういう状態でスーーーっと息を吐くとき、最初は声を出さずにやったほうがいいです。
だけどちょっと慣れてきたら「ふーー」と声をだしながらやってみて、今日は何秒くらい声を出し続けていられたか次の日はどれくらいかと計ってみるのもいいと思います。
そしてだんだん息が長く続くようになったらどうなるかというと肺の使い方が上手になるとか、その肺から出てくる小さな空気、ちょっとだけの空気でどれだけ声帯を震わせられるのかという、その効率が良くなるだけなんです。
自分の肺を、どれだけ効率よくたっぷり使うかというと、それにはまずしっかり吐いてからしっかり吸う、そして吐くときは細かな息をずっと長く吐き続ける。
これがすごくロングトーンの練習になるんです。
そしてそれをずっと声にしていってやると、ほんとにひと息で長い曲が歌えるようになる。
曲の最後の余韻に感情を乗せようと思ったら、ロングトーンが上手にできないとなかなかできない。
ですからこういうような深い息、長い息の練習をやっておいてあげると声はすごく出やすくなります。
そんな感じのことをぜひぜひやっていただくと、あら不思議、知らない間に大きな声で歌えるようになってきます。ながーい声が出せるようになってきます。