「歌う時の自分の声のイメージってどうするの?」4.『息を後ろから回す』ということは

質問1:
歌を習っている先生からよく『息をうしろから回して・・・』とかいわれるんですが、それがどういうことかよくわからないんですが。

Dr.松永:
イエイ! わたしは今日はこれが一番説明したかったんです、実は。
日本の声楽をやってらっしゃる先生の中ですこし昔の先生方はよく「後ろから前に」って表現をされる方が非常に多いんです。
でも、おっしゃるのはよくわかるんですね。
実は喉頭という臓器はどこの上を動いてるのかというと、何を隠そう、ぜんぶで7つある頸椎、首の骨の上にのっています。
まるで首の骨をレールにして、その上を滑るかのように喉って実は動いています。
だから喉仏に手をあててもらってゴックンと唾を飲みこんでもらうとちょっと動きましたよね、「マママママママー」と音階を歌うときも、その頸椎の上を這うように喉が上がったり下がったり動くんです。
頸椎っていうのが若干斜めになっていると、その上を喉頭というのは滑るんですけれども、そこで「後ろから回す感じ」ということを考えてみると、先ほどわたしが話しました、腹式呼吸をやって喉を下げるときの4番めに大切なことってなんだったか覚えてますか?

①まず喉を下げるためにお腹を出っ張らせてね②顎、口、母音をしっかり発音してね③首から胸にかけての筋肉をぎゅーんと下げる努力をしてね、といいました。
そして4つめは、というと『姿勢』です!
姿勢をまっすぐにする。
で、そうやって「後ろから回す感じ」というのを意識してやってみると、姿勢が悪かったら絶対にできないことなんです。
肩を落として、いい姿勢を保って、それで歌うとき「後ろから回す」という意識でやると姿勢をまずしっかりすることができるんです。
それと呼吸をするときに、腹式呼吸なんですが歌の先生はよく「息は背中に回ります」っていいます。
ええっ? 息って胸に入るんじゃないの? と思うかもしれませんが背中にも入ってます!
絵で描いてみると肺ってこんな形で、背中のほうまでいってるんです。
ですから先生がおっしゃる「背中にも息を回してね」というのは、実は「深呼吸しろ」ということなんです。
ふかーい息を吸って、それこそ腹式呼吸して、横隔膜を下げて、肺をたっぷり使ってね、ということです。
で、それも姿勢をちゃんと保ってる方が肺はしっかり膨らませられる。

でも実際、後ろから回すようにして出す声って、ちょっとくぐもった感じになるんです。それは何故かというと、さっきお話しした軟口蓋のところが開き過ぎるからなんですよ。
「あー」とクリアな声で歌うとき、ここはピタっとくっついてます。
このとき、お鼻から空気は漏れてません。
でも後ろから回して音を出してるときっていうのは鼻からたくさん息が漏れていて、鼻からも音が出ているんです。
後ろから音回してね回してねってやりすぎると、それがステレオで音出す、ということです。
すなわち、「あー」って口から出さずに鼻からのハミングも入れて、口の「あー」+ハミングの「ンー」も両方足すと『後ろから回す』ような音になります。
そうするとどうなるかというと、こんな感じの声です。