ボイスチェック・ソングチェック Part6.7.頭とこころと声の関係
ここではBさんの続き、歌に思い入れが強すぎて、感情移入しすぎて喉が詰まって声が出なくなるくらいなら、ちょっと他人事っぽくさらりと歌った方が歌いやすいのでは? と提案してそれをやってもらっています。
Dr.松永:
誰でも切羽詰った深刻な状況で自分のことを話そうとするときには喉が詰まって声が出にくくなったり、うまく喋れなかったりします。
それは特別なことではなく、誰にでもあることです。
だからそれを恥じることはないし、それはとても生理的な反応です。
けれど歌手として人様の前で歌を歌わなくてはならなくなったら、あんまりその歌の情景の中に自分からドブン!と入りすぎないで、ちょっと離れたところからその情景を見ているようなつもりで歌うと少しはラクに声が出たりします。
それはこころと声のコントロール、をするということです。
ゲド戦記のテーマソングが好きなKちゃんには、しっかり母音の形を口で作って、ちょっと大げさなくらいはっきり口を開けて歌うことを指導しています。
Dr.松永:
面白いことに母音をはっきり歌うとベル・カントしやすくなるんです。
ベル・カントというのは、喉が下がって喉が開きやすくなるんです。
声の響きも出てきます。
そして母音をしっかり歌うというのはそんなに難しいことじゃなくて単に歌い方の癖なので、しっかり練習すれば誰でもできます。
しかし、かといってもちろん、本番でこんな歌い方をしては駄目です。
あくまで母音をしっかり発音することで響く感じ、というのを練習するにはいい方法だと思います。
ほんとうに人間の頭とこころと声っていうのは面白いもんで、思った通りのことが声には出ます。
それが不思議なところ。
ですから情景があって、いつでも情景を歌ってればいいんじゃない。
たまには情景の中に入ってもいい、歌のヒロインになってもいい、ヒロインを見ている傍観者になってもいい、歌のどこに入ってもいい。でもいろいろやる中で自分がいちばん気持ちいい、自分がいちばん上手に歌える、自分がいちばん楽しいところを選んで歌っていくようにすると、不思議と声はそれについてきます。
これが私が歌を勉強しながら本当に面白いと思ったことなんですが、人間の頭とこころと声、っていうのは常に三位一体でくっついていて、面白く変化する、っていうことなんです。