「その歌い方、だいじょうぶですか?」4.自分1人で歌ってるわけじゃない!
そういうようなかたちで発声するための身体を作っていくと、自然と声は出やすくなります。
また筋肉が痩せても、タイミングを上手に捉まえられるようになるとパーン! って声は出ます。
喉の模型を見てください。ここが声帯です。
ここは息を吸うときにはパカっと開いて、声出すときにはヒュッと閉じて、それで下から空気がきて閉じたところがブルブルブルと揺れて声を出すんですけれども、これをこういう音の出し方をすると声帯を(意図的に)閉じることができます。
この、ヘッ! とか、ハッ! と言って、いったん声帯を閉じたところから歌のド頭を出すと、声がきれいに前に出ます。
いったん声帯を閉めて息を溜めるのがコツです。
この爆発的な力を使うと音を大きく出せるのと同時に、歌に対するビート感覚を養えます。
たとえば拍手をするんでも、こんなふうに何も考えずに手を打つのと、楽器みたいに少し意識して手を打つのとでは、出てくる音がまったく違います。
これは意識のしかた、タイミングの使い方で人間の身体ってのは楽器と同化するということなんです。
それを喉でやってあげたらいいということです。
喉(声)を自分の身体に連動させてどんどん力を出していけばいい。
そうすれば筋力を上げるだけじゃなくて、タイミングを使っていくっていうことで、発声のできるいい身体をつくることができます。
1人での練習はどうしたらいいの?
といったら、もうここからはイメージの世界です。
イメージ力をガンガンにふくらましてください。
それがポイントです。
歌を歌うというのは1人で歌うんですけれども、その場にいるみんなと一緒に歌うというのが気持ちの中にあるのがいい歌であったり、いいコンサートであったりします。
それはぜったい間違いのないことです。
ですからいくら1人で練習してても、お客さん全員と歌を歌うという大前提、これを忘れてしまってほしくないです。
その気持ちさえあれば、さっきいったような「俺の気持ちを聞いてくれー!」というようなことをやったとしても、まあみんなきっと聞いてくれるだろうと思えるし、押しつけにならずに、「おお、聞いてくれてありがとう!
みんな愛し合ってるか~い?」となるんです(笑)
自分が出す、みんなもレスポンスしてくれる反応してくれる、それでエネルギーが回り出すからすごくいいコンサートになるんです。
コンサートの状態っていうのはもちろん、ピッチがブレない、発声もきっちりしてる、ちゃんとした音をお客さんに伝えて、お客さんの心の中で歌いやすい状態にしてお届けする、そういう状態である程度までいったら、そこから先はもう多少音がブレてもズレても大体まあ、許してもらえるもんです。
というのは、エネルギーが回り出したらある程度のことはオッケーになるのがコンサートだからです。
でもそこに行くまでにはやっぱりちゃんとした練習も必要だけれども、でも基本はいつも「自分ひとりで歌ってるんじゃない」ということ、独りよがりの音を出してしまうと絶対にいいコンサートにはならないよ、ということです。
人間の脳には『ミラーニューロン』という神経があるのが発見されましたが、これは言葉通り『鏡の神経』です。
目の前の相手が悲しいと思ったら自分も悲しいと思い、誰かが嬉しそうにしてたら自分もなんだか嬉しくなってくるという、そういう神経。
だから人間って、1人でいるより2人のほうが楽しいんですね。
嬉しさは倍に、悲しさは半分に、なんていいますけども。
だから、そういうようなことを利用してあるのが「音楽」という芸術です。
そしたら歌を歌うときにも自分ひとりで歌ってるんじゃない、みんなと一緒に歌っているという意識で、みんなを引っぱって行かないといけない。
それはどういうことかというと、みんなを思いやって歌っていかないといけない、ということです。
それができたとき初めていいコンサートになります。