『新たにゼロの声を探すには?』3.自分の声をみつける練習法

さあ、では自分の声をみつける練習法でいちばんいいのは、まず鼻からたっぷり息を吸います。で、そのとき肩が上がってしまうと吸った空気はみんな胸のほうに入ってきてしまいます。
そうならないためには自分のおへそのちょっと下、丹田といわれるところを指2本できゅっと押さえます。その指を押し返すようにお腹をふくらませながら息を吸うと。指がお腹に食いこむ感じになります。これが腹式呼吸です。
息を吸うとすぐに肩が上がってしまうという人は、肩に片手を置いてやるといいです。こんな感じに。息を吸って肩が上がったらすぐにわかりますから。
そして、お腹のほうにたくさん息を持ってくるような感じで息を吸ったら、こんどは「スーーーー」といいながら息を細く長く吐きます。これは声帯を使った『無声音』というやつです。
イメージとしては自分の唇から細ーい糸が長ーく、スーーーーと出てくる感じでやるんです。
それで、落ち着いて「スー」って長ーく息がでるようなイメージでできたら、こんどは「マ」に移ります。
よく「マママママママー」ってやるじゃないですか。
それを、さっきいったようにお腹を前にぐんと出して、ゆっくり小さな声でけっこうですから「マーーー」といってみましょう。
そうですそうです、そんな感じ。

それでは次は、目をあけてると余計な情報がいろいろ入ってきてしまいますから、目をつぶってやってみましょう。
なんでもいいですけれども、できたら自然のものがいいですね、太陽とか月とか、お星さまとか小川とか、何か自分の好きな自然をイメージしながら、そこに向かってゆるやかにお腹をたくさんふくらませる感じで息吸って、「マ」をいってみましょう。
せーの、息吸って、「マーーーーーー」。
こうやって目を瞑って静かにやると息ってけっこうつづくものなんですよ。
逆にいうと感情が入ってるときって喉がしまることが多いんです。
変な喉の締まり方すると息って短くなります。
だから、長ーくゆっくりした、たゆとうような気持ちいい発声をしようというと、意外と余分な感情を落としたほうが、深い息でたくさん声が出せる、ということでもあるんです。
さあ、じゃあいまはあまりいろんなことを考えずに自然をイメージしてけっこう自然な声、怒ってもいない怖がってもいない楽な声が出てたと思うんですが、こんどは喜怒哀楽を逆に乗っけていくようにします。
では、まず最初はニュートラルに、その次は喜んで、その次はちょっと怒って、そしてその次は悲しんで、その次はちょっと楽しい声で、というように4つの感情で順番にみんなでやってみましょう。

まずはニュートラルに、たくさん息吸って~、お腹のほうにたくさん息吸って~、
ハイ、丹田外に出して~、はい、そうです腹式呼吸でーー、目を瞑ってみなさんの好きなものイメージしてーー
「マーーーー」
はい、いいですね、こんどは喜びながらやってみましょうか、
「マーーーー」
こんどはちょっと怒りながらやってみます。
「マーーーー」
そうです、こんどはちょっと哀れに、つらい、と思いながらやっ
てみます、はい、せーの、
「マーーーー」
はい、こんどは楽しくうれしくほがらかにやってみます。
「マーーーー」
は~い、けっこうでーす。

どうです?
ちょっとずつ違うのわかりますよね?
そうしたときにたぶん喜んでるときって口角上がるんですね。
ニカってほっぺも上がります。
これ! ひとつ覚えておいてほしい。
口角上げてほっぺ上げて笑顔で「マー」ってやると、響きが出やすいんです。
そのときどきの感情でお顔の形、喉の形、お鼻の形、それがちょっとずつ違うんだなと、意識してやってほしいんです。
そうしたら、「あれ、今日のわたしの声、響き落ちてるな」とか、元気にせいいわれてるのになんか元気でえへんな、とか思ったときに、「あ、ほっぺかも。鼻かも。口角かも」とか思いながらそこを意識して「マー」とやってみると、「ああ、またチューンできた」「声の周波数あわすことできた」ってそんなことができるようになります。

ですから、家でご自分で練習していただくときに、まず感情をスイッチオフする、静かに冷静にニュートラルな声を探す。
その都度ご自身で音の高さを変えていただいて、いちばん自分がしっくりするところ、その音を探してください。
その声で「マーーーー」とやって自分のニュートラルな声がわかったら、次は喜怒哀楽、愛しい、憎らしい、妬ましい、そういういろいろな感情を乗っけて、自分の声を聞きながら、ふむふむ、、とやったらいいと思います。
他人様の前で歌ったり、司会をしたりと声を出すことをやってますと、『即興』というのはとても大切になってきます。
そのときに『こうきたらこういうふうに』というのが反射でできるようになっておくと、これはすごくいいですね。
なんでかというと、たとえばいまわたしはここでみなさんにお話ししていますが、それがふつうにこんなふうに自然にニュートラルに話してますと、聞いているみなさんもふつうの身体になります。どういうことかというと、まあ落ち着いています。
それがわたしが落ち着きなく、わさわさリズムに乗って話しだしたりすると、みなさんのほうもわさわさ落ち着きのない感じになってきちゃうんですよね。
これがほんとに話者と聞き手の関係なんですけれども、いまここでわたしが話しているといっても、ここにいらっしゃる方々が「松永の話を聴こう!」と思ってくれなければ、わたしは喋れない。あるひとは下を向いてスマフォをいじってる、あるひとはうとうと舟漕いで寝てる、あるひとは隣のひととぺちゃくちゃお喋りばっかしてる、、、
これじゃあ、わたしも喋る気なくなるもん。
ね。喋ろうと思う。エネルギーが湧いてくる。喋る。
でも、みなさんも聞いてやろうと思う。
ここでエネルギーが循環します。
話者と聴衆のエネルギーが回りだすんです。
そのエネルギーのバランスをとるのが、実は『声』なんです。
そのとき、ニュートラルな声でぽん!とお話ができれば、聞き手にもニュートラルにその声は入っていきます。