「楽器を弾きながらだとどう歌う?」3.地面を感じる!
次は、楽器を弾きながらではないけど座って歌うとき。
声はまだとてもよく出るのだけれど、年齢がいって足腰や膝が弱ってきて、人前でずっと立って歌うのがつらい、という人がいます。
立って歌うのと座って歌うのでは身体の自由度が違うので、やはり立って歌う方が力は入れやすいです。身体全体を使えるので。
では座ったときはどうやって歌ったらいいのか。
こんどはさっきのバランスボールとは世界が変わってきます。
バランスボールっていうのは腰が落ち着きません。
ほんとに背骨が悪い人、腰が悪い人があんなのに座ったらもっと背中が悪くなっちゃいます。
だからそういう人っていうのは静かに座ることが基本です。
では静かに座るっていってもどこでリズムをとったらいいの?
というと、そういうときは身体のまんなかをなるべく動かさないようにして、足の踵でリズムをとる、なんていうのがあります。
このときしっかりした歌を歌うためには、お尻と椅子とがある意味一体感を感じるようにして。
立って歌う人は足から返って来る地面の力を感じながら歌う、座って歌う人はお尻の力を感じてやる。
ところが膝、腰、足が悪い、年齢の行った人やハンディキャップのある方が座って歌うときには、自分自身のお尻と椅子が一体になったように感じてほしいんです。
ほんとだったら足で地面の力を感じて歌ってほしいのですけれども、それができなくなったときに、お尻を椅子にくっつけて、お尻が椅子を通じて地面の力を感じるようにしてもらうと、意外と座ったままでもちょっと力強い歌が歌ってもらえるようになります。
結局お腹に力を入れて「あー」と声を出す、これが腹式呼吸ですが、空気を吸って出すときに、どこを使うのが一番ラクに出せると思いますか?
その答えは、お腹をぐわ~んと外に張って、おへその下、丹田というところをふわんふわんとやわらかく風船みたいに張って、それで「あー」と声を出すときにはお腹に力を入れる感じ、
そのとき空気がいちばんラクに出ます。
それを(息の)支え、といいます。
楽器を弾きながら声を出す、椅子に座ったままで声を出す、どう転んでも結局はこの自分がいまいて体重を支えている床(地面)の力をどう使うか、っていうことが一番いい声をスカンと出して、喉を締めないですむか、ということなんです。
それが息の支えです。
腹式呼吸をやっているのに、胸だの喉だの変なところに力を入れてやってしまうと、途端に喉がギューっと締まってくる、そこで無理に声を出すとポリープとか結節とかを作りやすくなります。
リズムとテンポとビート、とあったときに、リズムっていうのは何なの?
といったら、リズムというのは音のパターンですね。
たとえばボサノヴァがある、4分の4拍子がある、ロックンロールがあるワルツがある、といったように。これがリズム。
そのワルツを早くやったり遅くやったりと。これがテンポ。
だけどビートは、といったら、これは極端な話、手拍子したときに手と手がぶつかるじゃないですか、例えば4分の4拍子だとしたらこんな風に・・・・・
その手と手がぶつかるときベチャっとやるのかパン!と打つのか、その瞬間の跳ね返りというか、アタックの感じでビートがある・ないが決まってくる。
そういうアタックを感じるのは、っていうと実は地面の力をプレーヤーはけっこう使ってるんです。
だからパフォーマンスする人音楽する人歌を歌う人楽器をやる人は地面の踏ん張りっていうのを上手に使うと、その瞬間に息がストンと出て歌えたり、ビートを出しやすくなります。
そんなわけで、どういう状況で、どういう姿勢で歌うとしてもいつでも『地面の力を感じてやる』のがいいんだよ、というお話でした。