「わかりやすいセミナー、授業の発声法」1.第1の心得は『こころを定める』
まず声というのはこちらからそちらに出てるだけじゃなく、出してるときに自分でも聞いているわけですね。
ですから声で話をするということは、相手の心に伝える、ということもありますが、同時に喋っている自分に対してのフィードバックにもなるわけです。
これがあまりに変にフィードバックがかかりすぎると自分のお話に酔っちゃう、なんてことも出てくるわけでそれでは困るんですが、それでもある意味、声=エネルギーですから、エネルギーを出しながら皆さんの身体と心を揺さぶりつつ、自分自身ももっとお話のモチベーションを上げていくという。よく言霊、なんていいますけれど、声に力がこもった言葉、そういう音を使うことで相手にパワーが伝わる、自分にも再度パワーが戻ってくるという、そういうのがパワーボイスだと思います。
じゃあ、その本来のパワーボイスを獲得するためにはどんなことをしたらいいんだろうか、というのが、このセミナーの趣旨なんですね。
そもそも私がなんでこんなことをやろうと思ったかというと、診察の途中に患者さんからしょっちゅう聞かれるんです。
私は声の医者ですから、「どういうふうに喋ったらうまいこといくんですか」とか「喉がやられないですむんですか」とか。
もう27年医者やってますからそんなことばっかり聞かれて、本当は一人1人の方に丁寧にお話しをしてさしあげたいところですが、実際問題としそれは無理な話です。
となれば、ひと月にいっぺんだけでも声や喉に興味のある方にここに来ていただいて、お話をさせていただこう、というのが、まずはじまりだったわけなんですね。
だからこれは営利目的にやっていることではなくて、あくまで私の診察の一環としてやらしていただいているセミナーだと思っていただければいいかと思います。
ということで、松永のやってるPowerVoiceセミナーは、実は診察の一環である、という大前提がまずあります。
授業はというと、昔、神戸女学院大学というところで声楽をやっているお嬢さんたちに『音声学』という、声の授業をやっていたことがありました。音声病理学、音声心理学、音声生理学、なんていうね。
これは授業で、診察じゃない。
授業なので、この生徒さんたちが素晴らしい声楽家になるためにはどこからどこまでのことを知っといていただいて、医療知識とか、音楽に関係のある医学知識などを学んでいただいたらいいのか、ということを決まった時間の中に上手に盛り込んでみんなに理解し使ってもらおう、というのが目的です。
ではプレゼンはというと、私は医療システムの会社やサプリメントの会社に携わっておりますので、一般企業に対して説明に行かなきゃならないことがあります。
その場合、限られた時間の中で、まず私という人間を理解していただいて、私という人間が関わっている仕事にもう一歩突っこんで入って来ようという気にクライアントをさせなきゃアカンわけです。
そのためにはどう話したらいいか?
ですから同じ松永という人間が話をするのでもセミナー、授業、プレゼンで、みんな変わるわけですから、それはもうほんとうにケースバイケースとしか言いようのないことです。
よく話し方のハウツー本などにはいろんな話し方のコツやルールがいっぱい書いてありますが、そのルールを応用する前にまず、いったい自分はなんで今日のセミナーを授業をプレゼンを立ち上げてるのか、ということを、それをもう一度自分のなかで再確認しないと、全然意味のないことになります。
この1番最初の『このセミナーのありようとは何だろうか?』と自分のなかで納得して落とすことで、声って勝手に変わってくるんです。
だからもちろん、発声法のテクニックについては後でちゃんとお話ししますが、1番最初に必要なのは、というか、この発声法の第1番めに覚えておいていただきたいのは、『声と心はまったく一緒』ということ。
だったら、まずは『心を定まらせましょう』ということです。
この心が定まっていないと話せません。