「感動を伝える歌い方」2.まず歌詞ありき。ではその次は?

歌というものになくてはならないものは歌詞です。
ここに歌のすべてがあるといっても言い過ぎじゃないくらいです。
まず歌詞を理解しないとなかなか伝わりにくいです。
日本の歌手の方で、よくバイリンガルというのかな、二ヶ国語が話せて、日本語にも英語にも通じていて日常会話でどんどん使えるくらいのひとがいる、またオペラなんかの方は海外、ドイツやイタリアなどで長く暮らしてらっしゃって、そこの国のことがある程度わかるから、オペラの中に書いてある言葉でもスッと自然と出てくる・・・、というあたりまでいくと海外の、外国語の歌でもスカッと歌える、スカッと伝えられる、という感じなんでしょうけれども、ところが。
あんまりその国のことも言語も知らない、だけれどショーの構成上、ちょっと格好よく見せたいな、ということで外国語の歌を取り入れることあると思います。
それで、ちゃんと歌詞はそらんじて頭の中に入るようにする、歌えるようにする、でもやっぱりその細かな情景とか、細かなニュアンスは、(外国語を)自分が理解できない、という状態で歌ってしまうと、なんとはなしにお経のように聞こえてきたりします。

今日は2つほど練習曲を持って来ています。
ひとつは『雨に濡れても』と、『ムーンリバー』です。
たとえばこのムーンリバーは月の川、そういう川があるんだろうな、というところで歌うんですけど、その、

Moon river, wider
than a mile ~ I’m crossing you in style some day ♪

って歌詞があります。

それが、なんか知らへんけど月の川があってね、1マイル以上もある大きな川で、って、1マイルっていったら1.6キロかな、1600メートルもあるんだからむちゃむちゃ広い川ですね。
まあ、そんな大きな川の話でこの歌ははじまるわけですけれども、いまみたいにボソボソ歌っちゃうとあんまりおもしろくないんですよね。
それで、たとえばこれがリズムも、メロディーも、ハーモニーもへったくれもなんにもなくっても、月の川がね、あったんやて。
ごっつ広い川やねん。ほんまに。そんなとこ行ったことある?ちいちゃいときにね・・・・なんていうと、思わず、ええーって思いません?

・・・っていうふうに、自分の中にちゃんとその状況をとらまえて歌うと通じるものがある。
この歌は『ティファニーで朝食を』っていう有名な映画の中でオードリー・ヘップバーンが歌うんですけど、彼女そんなに歌が上手なわけじゃないんですね。でも、ストーリーの中でのヒロインの心情をうまく表現したオードリー・ヘップバーンの歌とヘンリー・マンシーニの素晴らしい作曲の両方でもって、これは非常にヒット曲になるわけです。
つまり、もうそこでちゃんと女優であるオードリー・ヘップバーンが(歌詞の世界を)感じて感じて感じて漢字まくって、自分の中で咀嚼して、それで歌を歌ったから大勢の人に伝わった、というわけですね。
そんなふうにこの歌詞というものをとらまえてやっていってほしい、ということです。

では、それ以外に歌にとって大切なものって何があるでしょう?
音程!
音程は大切ですね。
音程がちょっとガタガタっとすると嫌だったりしますね。
音程。メロディー。
次は。リズム!
そしてハーモニー。
この3つは音楽の三要素なんていわれています。
それで音の大切さ、音程、ピッチがズレたら話にならない、リズムがガタガタだったら音楽が変わってしまう、ハーモニーが、、、、それもおんなじです。
でもね、ここでやっぱり感動をお客さんに伝えなきゃあかへんわけです。
じゃあ、これの何をどうしたら感動が伝わるのか。

まず、自分自身が歌に酔いしれすぎちゃうとコントロールが効かなくなります。
ですから冷静に曲のよさをわかったうえで楽しむ、というところまではいっておいてほしいなと思います。