「ボイスチェック&ソングチェック Part.7」4.高砂

Dr.松永:
えーと、邦楽、日本の歌にしましても、それから西洋の声楽、またラテン系の曲にしましても、喉を広げて、それで音を外に飛ばして歌う、というのは基本、一緒なんですね。
ただ、ある種の民謡というのは逆に喉詰めるところがあったり、モンゴルなんかで『ホーミー』なんてのがありますが、ああいうのはまた違う発声をしたりします。
でも、まあまあ基本は喉を広げて、さっきいいました息の支えを胸で支えるのか、お腹で支えるのか、これは別なんですけれども、支えを崩すと音がブラつきます。
で、これを舞いをしながらやるとなると余計に腰がしっかりしてないとアカン、というのがあるんですね。ハイ、やってみましょう。

お腹の張り方ですが、グッと最初の出だしはいいんですけれども、お腹の出っ張らしかたが武道の形のようにお腹を硬く張り過ぎてるんです。
そうやってお腹を固く締めて「高砂や」ってやると喉を詰める方向にいくんです。

「たっかっさっごっや!」と声が上下に躍るとカッコよくないんですよね、ですから声は一定で、お腹はしっかりこれくらい大きく構えて、喉をしっかり開いて、「たぁーかぁーさぁーごぉーやぁー」と同じ調子でずーっと続けたほうがたぶん、きれいだと思います。
途中でパンパン!と止めたり、ヒュッとしたりするのはリズムでは必要だと思うんですが、その際にお腹がどんと出てても、息継ぎするときヒュッと身体が縮こまるとリズムが崩れるんですね。

お腹を張って歌ってて、歌いつづけて肺に空気がなくなってきた、というところで「ハァッ」と肩で息吸うんじゃなくて、息吸ってお腹を前に出すことで、これで息の支えが崩れずに腹式呼吸になります。

(参加者質問:前に出すことで息が入るんですね?)
(Dr.松永:入りますよ!だってお腹広げたら肺ふくらみますやん。)

お腹、丹田を前に出すということは自然に横隔膜が下がって肺は勝手にふくらみます。
そして、また歌ってて息が足りなくなったら息吸ってお腹をボンと出す。その繰り返しです。
丹田でしっかり息の支えができていれば、お能を舞っていながらでも音がブレません。

特にミュージカルであるとか、お能であるとか、身体が動きをともなって声を出すときですね、そういうとき、歌舞伎なんかをよく見ていただくと非常によくわかるんですけれども、踊っているときなんかでも肩は絶対
に上がってないです。
肩が上がってると、それだけで喉が詰まるんです。

ですからたとえ息継ぎのときであっても、肩を上げないようにしないとこれは歌が歌えないんですよ。これはもう邦楽でも洋楽でもなんでも。
どの位置でもって肺の形を崩さずにキメていくか、っていうのが『息の支え』というやつです。
みなさんがそれをどこでお取りになるのかはそれぞれ独自でいいのだれど、でも1番やったらいけないのは、息の支えを上やら下やらに動かすことです。

で、それを動かしちゃわないように1番簡単なので腹式呼吸、腹式呼吸っていうんですが、ドン!とお腹を下げてしまう、横隔膜を下げると、このお腹のでっぱり、息の支えというのが動きにくくなる、これが1番安定しやすいから「腹式呼吸で」というんです。