「ポップスって、なぜ売れる?」4.音楽がもたらす経済効果

長きに渡って政治の力がアメリカに移ってからは、そういう音楽を
使って(アメリカの文化が)どんどんどんどん広まっていっちゃった
んです。
だから、そこでまず政治の力なしには絶対音楽って広まらへん。
残念なことに・・・。
だってね、ちょっとそのときの為政者、トップにいる人が「この音楽
気に食わん!やめろ」って言ったら流行らへんのですもん。
ね、だからいまでも、わたし行ったことないからわからへんのですけ
れども、たとえば共産主義的な色合いの濃い北朝鮮とか、もういまは
自由主義意になっているけれどもロシアとかでは、そんなにはバリバ
リのポップってのがあんまり流行らなかったりするのはやはり政治的
な統制がとられているからだっていうことになるんですね。

さあ、そういうなかで、じゃあポップソング、残念なことに最初はその
時代その時代王さまに「これを聴きなさい!」「これはいいよ。元気に
なると」とか言われて聞きはじめて、それで元気になったと思ってたか
らポップスが1番売れたわけです。
だけどほんとにそれだけでポップソングがこんなに広まるんでしょうか?
それがね、違うんですね。

さあ、それではなぜポップソングがいろんな時代に影響を与えているの
かを考えてみましょう。
音楽にはろいろなジャンルがあるため、音楽が消費行動に及ぼす影響も
様々です。

どういうことかっていうとね、ここまでは政治の面から音楽を見て
いったんですけど今度は経済面。
お金儲けをするときに、音楽がどう使われるかを考えてみ麻生、って
いうのがあったんです。

 音楽がお店の状況にうまくマッチすれば、お客の落とす金額と購入
 商品に大きな違いが現れます。
 たとえばワインショップでクラシック音楽を流した場合と、流行りの
 音楽TOP40を流したときの違いを調べる研究が実施されました。
 その結果、クラシック音楽が流れていたときに客はより高価なワインを
 購入したのです。つまり状況にマッチした音楽の影響力が働いたことを
 示唆しています。

要するに無音、ワインショップに音楽を流さないで、シーンとしている
んです。なんとはなしにさみしいなって思ってお客さんはすぐに出て行
っちゃうんですね。
でも、なんとはなしに音楽が流れてて、なんかその雰囲気がお店に合って
いると、お客さんが回遊してくれるんですね。
「ああ、こんなボトルもあるの、これおいしいんですか?」みたいな。
で、そんなときに厳かな曲がかかると、うち飲みの800円くらいの安い
ワインじゃなくて、少なくとも3000円くらいの買ってくれる、とかね。
なんかちょっとこのお店に来たら敷居高いけど、なんか感じやから美味しい
ワインは美味しそうと思って、高いの買っちゃったっていうんですよ。

 前日の研究では、音楽の店舗に関しても検証しています。
 これによるとゆっくりとした音楽が流れていると、客もゆっくりと買い物
 をし、結果的により多くのお金を使うことがわかっています。
 この理論をレストランで試してみたところ、テンポの速い音楽が流れて
 いると客の食事のスピードも上がり、ゆっくりとした音楽が流れていると
 食事のスピードが落ちて食後にアルコールなどを注文して、さらにお金を
 つかう、という結果となりました。

だから牛丼屋さんとかさ、ラーメン屋さんとか、わーっと食べて、ひゅっと
出ていくようなところではクラシックかけたらアカンねん。

わたしはあまりパチンコ屋さんには行きませんが、パチンコ屋って言ったら
軍艦マーチと決まってた時代が昔あったんですね。いまはもうそんなどんぴ
しゃのはないと思うんですけど。でもやっぱり、パチンコ屋さんってギャン
ブル場ですからみんなの射幸心、ギャンブルしたい、お金賭けたい、儲けたい
って気持ちを高ぶらせて、それで元気にさせてガンガンガンガン玉打ってもら
おうって音楽をかけるんですね。
あそこでは絶対にご詠歌なんて流しませんよねえ。

だからやっぱりその商売商売、ビジネスに合ったタイプの音楽っていうのが
実はほんとうにお客さんの行動にすごく影響を与える、っていうことがわか
ってきたんですね。

ダンスミュージック。
ダンスミュージックというのも、たとえば日舞やってて、三味線弾きながら
踊る、それももちろんダンスミュージックではあるのだけれど、でも基本、
西洋文化がたくさん日本に入ってきた今の状況において『ダンスミュージック』
というのは、男性と女性が親しくなる、、、あのいまでこそほんとに女の子
くどいて、で男の子とすぐどっか行ってこうイチャイチャするっていうのが
簡単な時代になりましたけれど、昔はそうそう簡単に男の子が女の子に触れ
られへんかった。じゃあ、男性が女性の身体に手を回せるときっていったら
それは舞踏会とかダンスパーティーっていうときだけやったんです。

日本でいうと、日本はまあまあ性には大らかな国ではありましたから、ヨー
ロッパほど戒律は厳しくなかったんですけど、それでもやっぱり昔々はって
いうと、男の子と女の子が一番仲良くしやすかったのは『お祭り』やったん
です。
盆踊りじゃないけど、お祭りには踊りがつきもんなんです。
だから歌が、音楽が、そして踊りが、っていうね、まさしくジャパニーズ
ダンスミュージックですけれども。

そういうようなときのその時代のポップソングというのは、

 ① 政治
 ② 経済効果
 
で、よく使われていたんですが、ここでやっと出てきました。

 ③ 心理学的効果

それも男女の性的なエネルギー表現。
だからこれはある意味では純粋に芸術に近いところに入ってくるんですけれ
ども。
そこでこのポップソングというのが非常に生きてくるわけなんです。

どうして男の子が女の子に、女の子が男の子に、好きよ、愛してる、抱きし
めて、とかっていうのにクラシックではイカンのか。

クラシックでも別に惚れたはれたっていってくれてるわけなんですよ。
オーソーレーミーーヨーー いうてね♪
あなたはわたしの太陽だ!って、これ、いまでもそんなんいうてくれたら
うれしいですよね? ねえ。
だけれどもいまはそうやってやるよりは、もうちょっと平たくポップソング
で歌を、男の子は女の子に歌いたがるのか。、、、だんすみゅじっくの
っていうと、それはいまの時代やからです。

当然のことながら10年前、50年前、100年前のストーリーとなったら
もうそれは昔々のレトロな物語で現代にはピンとこない。
いままさしくコンテンポラリーな同時代に一緒にいてて、あなたのことが
好きやねん、一緒に踊りたいわ、好きやわ、チュ! とかっていうことが
いっぱい歌われているそういうのが今風のポップソングの中に入ってきたら
絶対に(古いものより)そっちのほうが素直に、2017年風に好きや!
ってのが言えるじゃないですか。

というわけで、男女の機微に影響を及ぼすようなものも(ポップソングには)
いっぱい入ってるんですよ、という、そういうことなんです。

だからこそ音楽をやるときに、ジャズがいいのかクラシックがいいのかポップ
がいいのかレゲエがいいのか、もちろんみんな自分の好きな音楽をやればいい
んです。
だけど、まずはなにがなんでも売れたい! って言ったらポップソングから
入らんとしゃあないです。

ポップソングが目立って優秀で誰もがやりたがるっていうことにはもうひとつ
お話があります。
ポップミュージックの成り立ちです。

1880年ごろ、もうそれこそ今から140年くらい前、ティンパンアレイ
ってところでジョージ・ガーシュインがピアノかオルガンか弾きながらお客
さんに譜面売ってた時代です。
そういうようなあたりから『ポピュラー音楽』っていうものがでてきたわけ
なんですけれども、ところがポピュラー音楽の最初はっていうと、ブルース
的なもの、カントリー的なもの、言ってみればいわゆるアメリカ民謡ですよ。
そういうようなものがいろいろ合わさりあって、で、そのアメリカ民謡の中
にもホワイト、いわゆる白人たちの民謡と、それからアフリカン、黒人たちが
いっぱいやってきてもうほんとに毎日毎日シンドイと。足に重い足かせつけ
られたりしながらも一生懸命、畑を耕して、綿を育てて、綿畑で苦し紛れに
歌ったのがゴスペルの最初のはじまりになるわけなんですけれども。
そういうようなアフリカンアメリカンの人たち、アフリカ系の黒人の人たちの
音楽が白人の音楽と混じっていってこの『アメリカンポップス』というのが
できたわけなんですけど、ですからポピュラーミュージックというのはやっぱり
いろーんな音楽を知らないと意外とできないってのがあります。