「フェルマータをどう活かす?!」4.脳に関するロングトーン効果
春のうららです。春霞で景色がかすんで、ちょっとおぼろげな雰囲気が漂っている
大気の下を隅田川がうつくしく流れている、と。桜もぽっぽっぽっと咲いてきてる。
そういうイメージにしっかり浸りながらこれを歌ってみます。
はーるのー うらーらーのー すーみーだーがーわー
のーぼりーくだーりーのー ふーなびーとーがー
いかがでしょうか?
メロディーと日本語の歌詞がよりいっそう相乗効果で説得力が増
うん。だから情景がぽんとくるんですよね。
そりゃ、なんでかっていうとわたしの中で、さっきあれだけ喋ってるから、自分の
頭の中にインプットされてるわけなんです。
あのね、だから歌のお勉強するときに『朗読』ってすごくいいんですよ。
隅田川を一生懸命イメージして喋ってみる。
隅田川ってどこにあるんやろう、と地図で調べてみる。
その位置だとか、どうやってその川ができたとか、そんなことも知るとよけいに
「ふぅーん」って深まってきます。
あれ、なんでしたっけね?
オードリーヘップバーンが『ティファニーで朝食を』の中で『ムーン・リバー』
っていうのを歌ってました。
ほんとにどこのどんな川かわかんなくて、むしろあそこでオードリー・ヘップバ
ーンが歌い、ヘンリー・マンシーニの作曲だったな、ということでわたしたちは
知ってるんですけれども、それだけでも、あの映画を、あのときのオードリー・
ヘップバーンのかわいらしさをわたしたちは思い出す。それでも十分かもしれま
せん。でも、ほんとは『ムーン・リバー』ってモデルの川があるんだったら、
さらにそれを知ってそこから深く歌っていけるのかもしれません。
・・・っていうふうに、そういう、いろんな物事に対しての事実を知ることがで
きればできるほどわたしたちはしっかりとした条件付けができる。そうすると、
余分な我とか心とかが消えていくんです。
そうするともうその歌のダイレクトな良さっていうのが(聴いている)みなさん
にお伝えできる、ってことなんです。
で、そこでさあ!
このフェルマータをどない活かそう、いう話になってくるわけです。
ね。
ここで、みんなで簡単なワークショップをしてみましょう。
まず、みなさん、これは全員でやります。
たくさーん息を吸って、軽くですけれども「マーマーマーマーマーマーマー」
ってのを一緒にやりましょう♪
いきますね。せーの!
マーマーマーマーマーマーマーーーー
はい!
じゃ、こんどは一番みなさんが出しやすいような音を選ぶつもりです。
それで音を少しづつ区切って出してみます。
マー マー マー マー
ハイ!
マー マー マー マー
はい、ありがとうございます。
どうでした?
面白くはない。
まあ、面白くもないやけどね。
マー マー マー マーってやっても。
じゃあ、今度はこれを最初はマー マー マー マーってやりますけれども、
その次に伸ばしてみます。
ちょっと聞いててね。
で、その後にみなさんにやってもらいます。
マー マー マー マー マーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ってこんな感じです。
めんどくさいけどちょっとやってみましょう。
いきますよ。ママママって4回やってからロングトーン、伸ばします。
せーの!
マー マー マー マー マーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
できる人はずっとやって、できない人は途中でやめてもオッケーです。マーー
できるだけ伸ばしてくださいーーーー マーーーーーーーーーーーーーーーー
最後の最後までできる人のいるところまでやりまーす。マーーーーーーーーー
ありがとうございました!
どない? しんどい?
しんどい。
しんどいよねえ。
どうでしょう?
息しんどい。
息しんどいっすよねえ。
どやった?
声出して気持ちよかったです。
ああ、ほんまに? はい。
いかかです? まあまあ? はい。
あのですね、何が起きたのか。
最初は、マー、マー、マー、マーくらいやったら大してなんも起きません。
フツーに声だしてるだけ。
ところが、ロングトーンてのをやると、あたらしく息が吸えない。
一呼吸でわーと出してゆく。誰でも最後は声が出なくなる。
その瞬間に何が起きてるのか?
二酸化炭素が身体の中に溜まってくるんです。
で、人間てね、二酸化炭素がたくさん溜まると、何が起きるのか。
どないなると思います?
二酸化炭素がどんどん溜まったら?
なんかボーっとする。
そうなんです! ボ-っとする!
あの、もうずーっと二酸化炭素だけ。
酸素入ってきへんとどうなると思います?
死にそうになる。
そうなんです!
死にそうになる!
そうです。ボーっとして、それから死にそうになります。
二酸化炭素。
これがねえ、あの今度は脳医学の話になるんです。
おもろいねんから。
1人で喜んでますけどね。すんません。
CO2が溜まると、、、
● 頭がボーっとする
● 窒息死、死にそうになる、ツラくなる
さあ、もし人間の息が足りなくなって、酸素が足りなくなって、二酸化炭素
だらけになったら、人間の身体って、どこを守ろうとすると思います?
そのとおり!
脳を守ろうとするんです。
脳はいちばん酸素を消費する臓器です。
酸素たくさん欲しいんです。
ところが酸素なくなってきた。二酸化炭素が増えてきた。
酸素をとるために、脳はどう動くのか。
・・・脳の血管が広がります。
だからロングトーンでね、お経をあげるなり、長いこと歌うたうなりの効果
効能というのは、頭をしゃきっとさせる効果があります。
ですからとにかくお経でもなんでもいいですから、わあーとお経をずっと言
ってます言ってます言ってます、、、それも一息でできるだけ長くやろうと
するんですね。
ずーーーーとロングトーンで声を出してると脳の血管が広がって頭がしゃき
っとする、そして雑念が落ちるんですね、息くるしいしシンドイし。
そうすると、それを歌うたいながらやってるとすると、自分の中でのその
(曲の)風景や情景に対する集中度が上がるんです。
今日、実験しました。
何も考えずに『夕焼け小焼けの赤とんぼ』ってやってもらったのと、
(情景入れて)ゆうやーけこやけーの、てやってもらったときと。
そこの情景を感じれば感じるほどいいっていいましたよね?
伝わるものが多い。
ところがそこで(フレーズの)お尻を伸ばす。
フェルマータかける。
そうすると、なんとかかんとか、かんとかでえぇぇーーーー♪ 音が小さく
なってくる、みんなが集中する、息はあがってくるわけです。
自分の頭の中にCO2が溜まってきて脳血管が広がるんです。
そこにもっと耽溺していきます。
オーソーレミーヨーーーー、、、、もうそこに入っていきまーす、入って
いったときにー、、、 ね、いろんなものが落ちたら、どん! 伝わるもの
が増えます。
これが、超強力フェルマータの効果ってやつです。
実はそれは生理学、脳医学に与したっていうのがベースにあった、って、
そういう話なんですね。
実は人間の心理学的な、心理的な側面とか、生理学的な側面の中に、長ーく
伸ばして、それも音を安定させて長く伸ばすところには、いろんなものが
乗りやすくなる、っていうのは、そこに集中するから、ってことなんです。
だから逆にいうと、上手に歌を歌う人っていうのはそんなに長くのばさなく
ても音を小さくしなくても、1個ずつの音にこうガッガッと集中して入って
いくと、その瞬間でもうドン!ドン!ドン!って伝わるものが増えてくるん
ですね。
だけど、そこであんまり来すぎると、いまここで聴いているのにどんどん
来られると、疲れるときもありますでしょ?
特に重いテーマなんかでこられると。ね。
そしたら、そんな重いテーマでガンガン来られるとキツイなあっていった
ときに、それこそ緩急自在って言葉がありますけれども、さらっと歌って
最後に余韻を残すようなかたちでやっておくと可憐だし安らぐし、ってこ
とで、歌の世界にも入りやすいし、自分もこう乗っかりやすい。
やっぱり芸術、さっき言った時間と共に経過する音楽っていうのもそうい
うところがあります。
だから最初ちょろちょろ中パッパッツ、赤子泣いても蓋取るな、じゃない
ですけれどもね、やっぱりひとつの物事を上手に完成させるには、最初は
少しづつ入って、けっこういい感じで盛り上がってきたらそこでクライマ
ックスに向かってドーンといっちゃうと。で、ドーンといってもう最後の
感動を途中で変なかたちで終わらさせないように、また上手に上手に終わ
らしてって、最後の最後まで、エネルギー的にはラクになってるから、
よかったーと思わせながらも細く細くつないでつないでつないで、もうい
っぺんドンとくるか、ちょっと流すかとか。ポルタメントかけて違う音に
持ってって、ってやるか。
それはいろんな表現があるんですけれども、そういう生理的なこうガッと
上がってヒュッと降りるっていう、まぁ、ひとつの放物線を描くというの
かな。
そういうようなかたちでもっていくのが、とっても身体に合っている芸術
だということなんです。
そこでこの最後に音を上手に伸ばす。
小さくもってったげる。
ていうのがですね、人に感動を与えやすくする、人に感じいってもらいや
すくするっていうテクニックであったり、またそれが身体の自然の摂理に
合った方法だという、そんな話でした。