「いい歌を歌う秘訣、教えます。」4.「歌」を「歌」にするのはほんとに難しい
ところがそこに、大きなお口をあけて、しっかり声をだして、それで譜面通りに
ピッチをずらさずにやろう~ なんて思ってると、いまの歌詞の、日本語の、
言葉の持ってる世界がぜんぶ崩れはじめます。
で、いったん崩れるとアタタタ・・・って慌てちゃうもんで、自分の心の中に
ある世界でさえちょっと歪んでしまったりするんです。
エライコッチャ!どうしよう!恥ずかしい! って小さなパニックがやってきます。
で、そうすると、まあ途端に芸としての歌はなくなる。
じゃあ、どうしたらいいの?
もう何遍も何遍も10篇20篇100篇も1000篇も、これが身体に染み込む
まで指を動かすなり歌を歌うなりして100%ぜんぶ入ったときに初めてぽん!
って、歌って歌える、そんなもんなんですね。
だからもうほんとに練習って必要です。
だけれども譜面を見ながらちゃんと手を動かしたり、声を使って歌って、っていう
のは、すごく基本形としてはいいところなんですね。
で、歌にすると大変、というのはみなさんご存知だと思うんですけれども、
こんどはこの気持ち、をベースにして朗読だけちょっとしていただいていいですか?
どうぞ。
Cさん、歌詞を朗読する。
はい、ありがとうございました。
で、Yさん、
さっき歌われたその歌の感じ、もちろん、歌いあげたぞーっていう気持ちよさはあると
しても、この曲を通して伝えたかったご自身の気持ち、という点で、さっきの歌のほうが
ぜんぜん気持ちよかった、ってうのと、いまの朗読と、何がどう違うかというような差は
ありますでしょうか。おんなじでしょうか。
えーと、歌のときは、なんでしょう、その歌詞も自分ではわかってるつもりだったん
ですけど、それをこう歌として乗せるといまんとこ詰まってあれしてるし、なんかこう
全然30%くらいの感じしか歌えなかったんですけど。いまの朗読はほんとに気持ちを
こめて読めた、、、読んだつもりです。
はい、ありがとうございます。
そうなんですね。
ですからほんとに歌を歌としてピッチだのリズムだの、そして伴奏があればハーモニー
だの、そういうことを100%は無理でもできるだけ完全、完璧な状態仕上げるって
大変なことなんですよ。
だけれどまあ少なくとも日本人として日本語をふつうに読んでみる、そうすると、
「ほら、そこんとこもうちょっと伸ばしてー」とか、「そこは大きな声で」とかいちいち
言わなくても勝手にできるんですね。
で、そうじゃなくこれを読めば、・・・・・・と、こんな風に無機質になっちゃう。
でもさすがにそうはふつうは読まないです。
生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに
胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ
やっぱりあったかな感じってのは言葉からくるわけやから、
あたたかさ、ってなるわけですよね。
そうするとやっぱりじぶんがほんとに人に、他人に、お客さんに伝えたい気持ちっていう
のがある程度だせるので、人はちゃんと「はあ~」って、便秘にはならずに気持ちの快便!
みたいな感じですけど、スカッと出せる感じになって、いい感じになるわけなんですね。
やっぱり生理的に胸にあるものがスーっと出せるっていうのはとても気持ちいい。
だけど変なところでぎゅ!っと固まっちゃったり、なんか通りません、って感じとか、
コピーやりきれません、、、とかなっちゃうとすごくしんどくなるんですね。
曲ってなんなの? 歌ってなんなの?
それを自分の中でマスターするってどういうことなの?
っていうのはこういう感じだ、っていうのがみなさんにわかっていただけると非常に
うれしいです。
はい、では次の方、お歌いください。
Dさん、『いっそセレナーデ』を歌う。
はい! ありがとうございます。
この『いっそセレナーデ』ですけれども、またみなさん、これ聞いてらっしゃって何を
感じたか、ちょっと二言三言くらいでお教えいtだけるとうれしいです。
あの、後でわたしも言いすけれどもこの曲、けして簡単な曲じゃないんですね。
ですから、うーんと、、なんていうのかな、パッと書けることがあったら書いていただき
たいし、二言三言って言ってもそんなにないや、と思ったら一言でもけっこうです。
はい、では、これはいちばん最初に歌っていただいたKさんから聞いてみたいと思います。
切なさ、ですか。はい、わかりました。
粋でお洒落、なるほどね。
後悔、なるほど。
どのあたりが後悔に感じられました?
夢のあいだに浮かべて泣こうか、っていうのがこう、枕に顔をうずめて泣いている
感じがします。
はぁー、なるほど、なるほど。
終わった恋の儚さ、ふぅーん、、なるほど。
憂い
いまはなき思いで
はい。なるほど。
ちょっとこれ、少し分かれましたよね?
でもなあ、なんだけど、曲のベースにはなんか確かにお洒落やなあ、とか、粋やなあ
いう感じはあると思うんですね。
特にこのあたりの曲って切なさとかね、もどかしさとかね、そんなんがたくさんくる
いうのがあるみたいですね。
でねえ、わたしはというとですね、これはすみません、、、正直なところをいいますと
恋愛、っていうよりは、恋愛? っていう、、、
あんまりわからへんかったんです。
っていうのはどういうことかっていうと、甘い口づけ、遠い思い出、
ああ、なんか遠い思い出いうんやから昔々にこんなことがあったんかなぁ、
夢の間に浮かべて泣こうか、
ふーん、、、なこれおんなじ人との恋愛? いや待てよ、昔こんなええ恋愛してたけど
こんどのやつとはこんな恋愛?
とかもうさっぱり、そのあたりの時間的なものがあんまりわからなかったんですねえ。
で、まあ、忘れたままの恋のささやき、今宵ひととき探してみようか、はあ、じゃまた
復縁をしはったんやろうか、どうなんやろうか、
で、恋の歌が誘いながら流れてくる、そっと眠りかけたラジオからのさみしい、そして
悲しい、いっそやさしいセレナーデ、、
ふーん、ちょっとこれだけではなかなかわたしの中にはピンとこないな、わかんないな
でも、まあ、恋愛の歌であることはまぁ間違いないよな! くらいにしか、まあ、わたし
わかんなかったんですね。
それともうひとつおっしゃってたのがKさん、ふだんのキーより低いのでやっちゃったと
いうことで、なんかいっときの美輪明宏調みたいな感じになってしまった、っていうんで
どっちのほうに足があるのかな、と。
えー、現在の恋愛か昔の恋愛か、どっちかな、っていうのがちょっとわかんなかった、
っていうのがあって、まあこんな表現になってしまいましたけど、、、
これをまたすこしKさんに朗読をしていただけたらと思うんですけど、
この(気持ちの)ベースを踏まえたうえで朗読していただけますでしょうか。
Dさん、『いっそセレナーデ』の歌詞を朗読する
はい。ありがとうございます。
なるほど。
えーと、いまご自身の中ではこの朗読はどんな感じでどんな情景を思い浮かべましたか?
情景解説を伺えるとうれしいんですけれども。
えっと、もう忘れてしまったくらい昔の恋愛の恋人を思い浮かべながら
歌ってるんじゃないかなと、、、
なるほど。
じゃ、もうほんとにいまは独りぼっちだと。
そうです。
で、昔の恋愛したときの懐かしさとか、さみしさとか、いろんなことを思い出しながら
この歌を口ずさんでる、いう感じですね。
はい。
じゃあ、もう少しキーを上げていただいて、この曲もう一度ちょっと歌っていただいて
いいでしょうか。
Dさん、再び『いっそセレナーデ』を詠う
はい。ありがとうございます。
まあ、少なくとも2回めに歌っていただいたときのほうが歌としては入ってきたと
思うんですね。
だからこういうの(曲の気持ち)をベースに、っていうのはありますけれども、あの
やっぱり上がっちゃうとね、大変なのであれですけれども、でもやっぱりいまのほうが
わかりやすかったなあと思うし、そういう流れできたら、あ、なるほどなっていう風に
こっちも聞いてて腑に落ちるっていいますか、なかなかふんふん!って思うものがあります。