「超母音発声のススメ」3.ウレタンを噛む効果
ゆうーやーけ こやけえーーのー
そうです。
「けえの」のところがすこしラクになりません?
はい。
・・・っていうふうに、なんと不思議なことに、こういう歌の中で、
ひょん↑って(音が)上がるところっていうのは喉がひっくり返るんですけど、
これを軽く、、、そんなに思いきり噛めとは言ってません。そんな歯形が付くほど
噛まなくていいんです。
この弾力性ってありますでしょ?
ちょっとキュンキュンって握っていただいていいですか、みなさん。
キュッキュッっていうの。
このていどの軽い弾力でキュッと、それで顎にちょっと力を入れて噛んでやるだけで
じゅうぶん喉は上がらずに、下げとくことができるんですね。
で、またそのときに丹田のほうにも意識を置いて、お腹を外に出っ張らす、
っていうのをやると、もうバッチリになるんですね。
ね、ちょっとやってみましょか。
2行め、最初は何もなしで。
あかとんぼぉー おわれぇーて
みたのぉーはぁー いつのおーひぃーかぁー
はい、それでちょっと噛みながらやってみて。
どうぞ、ここまたおなじように。
あかとんぼぉー おわれぇーて
みたのぉーはぁー いつのおーひぃーかぁー
はい。けっこうです。
どうです、感じ?
なんかちょっとだけ噛むと、あれ? 響きでやすいやん、って思いません?
で、そこんところでもうちょtっとだけ誇張してやってみてもいいと思うんですけど
もういっぺんやりますね、わたし。
まずふつうにかるく。
あかとーんぼー おわれーて みたのーはー
いつのーひーかー
ちょっと咥えてやります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やっぱり響きが出しやすくなるんですね。
で、このやり方でいつでもみんながウレタンを口に咥えながらやるわけにはいかないです。
そしたらそんときはどうしたらいいの? っていうと、こういうキュッとちょっと噛むというのを
おうちで、、、人前でやると恥ずかしいですからね、やっといて、それで慣れたら歌うときに、
何もなしでもちょっとキュッと噛む感じで母音を丁寧に発声すると、この「けえの」ってところも
声がひっくり返らずにラクに歌いやすくなるってのがあるんですね。
ちょっとやってみましょうか。
まずそれなしでサクッと歌ってみてください。
はい、どうぞ。
ゆうーやーけ こやけーえの
ね、ちょっとカスカスしやすくなるんですよ。
ちょっと声が嗄れてます、今日。
うん。でもまあ、それだけじゃなくてもけこうね、さらっとなんにも考えんとやると
実はこの山田耕筰さんの赤とんぼって歌は、意外と難しいんですよ。
音がなだらかなところもあるけど、ひゅん!って上がるところも何ヶ所か入ってます。
それをちょっと噛みながらやってみてもらえます?
ゆうー
あ、「う」はこれをね、極端な話、唇で絞るような感じですね。
それで「や」とか「け」の音は奥歯でキュンキュン噛む感じです、どうぞ。
ゆうーやあーけ こーやけーえーのー
あかぁーとぉーんーぼぉー
はい、オッケー!
どない?
ちょっと掠れ減るでしょ。
はい。ラクです。
でしょ?
ねっ、けっこう意外とラクになりますでしょ?
それはなんでかっていうと、喉がそういうふうに掠れてるときって声帯のあわせがうまくいかない
っていうときなんですよ。
ところがこの奥歯、顎にキュって力いれてやるだけで、口の中、喉の奥のところに
広がりができるんですね。
その口腔容積がじゅうぶんにとれるようになると、そうすると響きが良くなるし、
声帯の合わせもまたよくなって歌いやすくなるんです。
ちょっといっぺんやってもえます?
最初はそれなしで。
ゆうやあーけ こーやけえーのー あかとーんぼー
それまたいっぺん口に入れて噛みながら
いま言うたみたいにしてやってみてください。
はい、どうぞ。
ゆうやあーけ こーやけえーのー あかとーんぼー
はい。そうです。
どうです?
感じ?
あの、なんかスムーズ。
でしょ?
その喉の引っかかりが不思議と減るんです、これ。
それがガット¥チガチに力入れてやっちゃうと喉に力が入るからそんなもんぜんぜん
話にならないです。
よくあの「ういろう売り」とか、あめんぼあかいのあいうえおじゃないですけど
役者さんたちなんか、そういうような口上の勉強をします。
そういうときに母音だけでやって、って言ったら「拙者、親方と申す、なんたらかんたら」と
こうあるのが、「えやあ、おあああおおうう」とこんな感じで入っていくわけなんです。
それはそれでいいんですよ。
で、こんどは文章つけてやってね、と言ったときに、「せっしゃ、おやかたともうすは」って
いうんで活舌がすごくよくなって聞こえやすいセリフが言えるよってのもあるんですけど、
ところが、それが無理にやっちゃうと、いまやった「ゆ”う”や”あ”-けこやけー」みたいな
感じで、心は乗らへんし、伝わるもんも伝わらへんようになるし、喉は絞りすぎて、それで
声帯ポリープとか声帯結節を作りやすくなるっていうことになります。
これを見てくださっている人にお願いしたいのは、ほんとにこういうちょっとした簡単なもので
発声練習ができる、ということ。
おうちで歌の練習をするときに、これをキュッと軽く噛んで発声してもらうことで、口の中の
容積を保ちやすくなる。
そのときに喉を下げる意識と、お腹を外にちょっと出っ張らせて腹式呼吸でやる意識、
その意識を両方ミックスしてやってあげるだけで声がひっくり返りやすくなるところもそうならずに
喉が詰まることもなく、ラクに歌えるようになるってことなんですね。